難関のセキュリティチェック

2日、ニューヨーク時間の午前11時。(日本時間では2日午後9時)
ウォール街から少し離れたところにある証券投資銀行の地下三階の車寄せに、おじいちゃん投資家がホテル玄関に回してくれたリムジンから降りました。
私はレディーではないけれど、マキちゃん、私、猪八戒先生の順番で降車。
赤い絨毯の先には、おじいちゃん投資家の笑顔。
「Mana、いい服だ。とっても似合っているぞ。」と自分の見立てに満足しています。

そのおじいちゃん投資家から、昨日いただいたプレゼントはすべて着用。
コーチのジャケットはゴージャス。
でもとにかくスカートの丈が短い。
しかもブラウスは超薄で、おじいちゃん好みと思われるシモーヌ・ペレールの深紅のランジェリーが透けて見える。
ここに来る途中、車の中でスカートの裾を何度も引っ張ってみたものの、マキちゃんから「諦めなさい。」のひとこと。
対面式座席の前に座っていた猪八戒先生の方を恨めしく見上げると、
「あの人に文句を言える人は誰もいない。大統領だって敬礼するくらいだからな。まぁ楽しめ。」と。

「それにしてもブラもそうだけど、洋服もサイズはぴったりなんだけど。」というとマキちゃんが、
「昨日、ペントハウスに入る前に、セキュリティゲートをくぐったでしょう。あそこにはマイクロ波が12方向から照射されていて、服の下まで透けて見えるそうよ。そのときにゲート下に設置してある体重計のデータと一緒に身体全部のサイズがわかるんだって。
女性の場合は、X線も放射されるといっていたわ。
その理由は、女性が子宮の中に小型のプラスチック製爆弾を仕込んで、それをトイレで取り出して携帯を起爆装置にして遠隔誘導で爆発させるという手口が、昨年はニューヨークで6件もあったから。
だからアメリカのセキュリティは厳しいけれど、みんな納得している。

この話、昨日執事さんがセキュリティゲート前で説明してくれたでしょう。私に妊娠していないか、と聞いたのはそのX線が理由。愛菜、英語わからなかったの?」

 

前置きが長くなりましたが、私たちはマキちゃんを先頭にして、赤い絨毯の先で待つおじいちゃんのところに向かいました。
ところがそこからが、大変でした。
セキュリティチェックです。

「携帯電話、時計、そして指輪などのアクセサリーもお預かりします。」
「靴はこちらで用意してありますから、お好みのものにお履き替えください。」
ご丁寧でしたが、しかしとても強い口調でした。
すべて盗聴やテロを警戒してのこと。

靴といっても、どうせサンダルなんだろうな、と思っていたらなんとシャネル。
しかも新品でした。
「これ素敵!」というと
「どうぞお帰りの際はお持ちください。」(え、くれるの!?)
「箱とロゴの入った手提げバックも用意してあります。」

これがアメリカの金融界かぁ、と思いました。

セキュリティチェックが終わると、案内役の人を先導に廊下を進みましたが、私たちの四方には機関銃を肩から下げた警備員が囲んでいます。
私たちを警護しているのか、私たちが見張られているのかわからない状況です。

応接間に通されてしばらくすると、大きな扉が開きました。
そこには、ダイニングテーブルを背にした満面の笑顔の紳士の姿。
「お待たせしました。このようなご時世ですので、セキュリティの照合に時間が掛かってしまいました。」
(私が怪しまれたんだ…。男だけど女だから。外務省はお休みだし。)

米国金融界の大物とのランチタイム。

テレビで観たことのある連邦準備銀行の総裁が登場。他3人。
当然のようにおじいちゃんは上席。
そしてなんと、その隣が私…。
少し前から気になっていたのですが、おじいちゃんはこの私をエスコートしている様子。
着席したあとで、猪八戒先生とマキちゃんの顔を見ると、目をそらす。

そうです、私はこのおじいちゃん投資家の愛人役でした。

私は考えました。
そうだよね。猪八戒先生や兄弟子の奥さんだったマキちゃんなら、このような人たちと会食しても普通のことだけど、私ごとき分際の者が来られるようなところではない、と。

私がいまこの席にいられるのは、世界に冠たる投資家の愛人役だからだ、と合点がいきました。

すべてが理解出来たら、そこは人生百戦錬磨の愛菜です。
愛人らしく旦那さんを見つめ、寄り添い、カラダの一部を何気なく密着させる。

きっとこの人の愛人なら、人前であってもわがままをいうのだろう、と思って
テーブルの上に置いてあったお水の入ったグラスをさして
「私は、ガス入りじゃなきゃイヤ。」とおじいちゃん投資家にすねてみせて、炭酸水を出してもらいました。

私が炭酸水を頼んだものですから、テーブル席全員にも炭酸水を並べなくてはなりません。
グラスは、バカラの90年代もの。
厨房から取ってくるのも、磨くもの大変です。
それをわかった上で言った私のわがままに、猪八戒先生もマキちゃんもおじいちゃん投資家も、一瞬顔がほころびました。

私は、心もカラダもおもちゃにされてきた経験があるから、物事に怖じ気づくことはありません。
だから最初から言ってくれたらいいのにと、そこでちょっとムッとしました。

セクハラやパワハラのない世界なんて、私は知らない。
そうゆう環境に自分を置いていたのが間違いだったのかも知れないけれど、私の場合はそもそも精神病。
セクハラやパワハラを受けていると思っている人だって、お化粧なしで、多少胸があるからTシャツの下にブラが透けて見えると、私を奇異な目で侮蔑する。
これだって一種のセクハラ&パワハラ。
健常者に対する被害ならセクハラとかパワハラになって、私みたいな者には単なる差別。
世の中、自分中心にすべてを考えるから、不平等の意識が生まれるのです。

アメリカって不思議なところがあって、奥さんのいる方が他の女性と仲良しになると大変な騒ぎになるけど、なぜか男娼とでは周りが寛容なところがあるのです。

だからおじいちゃん投資家も堂々としています。
初対面の人も私に話しかけてくる。

私は元々が男だから、男の人がしてほしいことや、どうゆう仕草なら男の人を挑発出来て、どういう話で男の人の興味を引くかもよく知っています。

そこで、(どうせ私は興味の対象なんだからと)スタッフにもバレないで完璧な女として銀座でホステスをしていた経験を生かして、カラダに触らせないで男の興味を引くワザを発揮。
つまり私が個人的に抱えている悩みを、共通の話題にすること。
このランチタイムでは簡単でした。話題は「為替」。

私のブログを前から読んでくださっている方はわかっていると思いますが、私は「ドル/円」で失敗したことは、ここ数年間で一度もありません。
その理由は、値動きが他の通貨ペアと比べて遅いし、値幅が読めるから。
しかし「ユーロ/ドル」や「ポンド/ドル」、「ポンド/豪ドル」では、損切りのオンパレードみたいな時が実際にあります。
私が考えるに、値幅の感覚がわかっていないからです。
ドル円でいう設定レンジから導くターゲットラインが、機能しないのです。

その悩みを打ち明けてからというもの、ランチタイムは盛り上がりました。
相手の方々は、「実は、そのとき…。」みたいな裏話もしてくれました。

そうは言っても、私のカラダに関する興味がなくなったわけではないので、途中からジャケットを脱いで、ランジェリーしかつけていないと思われるような、スケスケのブラウス一枚になることも忘れませんでした。

いざディーラールーム見学会

快活なランチタイムが終わって、私にとって憧れのディーラールームに向かいました。

最初に驚いたのが、乗り込んだエレベーターには行き先の階のボタンがないことでした。
案内をしてくださった方の虹彩認証だけでエレベーターが動き出し、速度が一定ではなく、しかも上昇しているかと思ったら下降したりして、降りたところの階が全くわからない仕組みになっていました。

エレベーターを降りると、そこは間接照明だけの大きくて静かなチャコールグレーの廊下。
真っ暗な天井には、小さな赤いランプが点灯している防犯カメラがいくつもあります。
一行は私を含めて9人。
何度かセキュリティゲートを通って、最後は「共連れ禁止」ブースに一人ずつ入って、憧れの扉が開きました。

そこは天井の高い巨大な空間。
当然、窓なんてありませんが、調光はその日の天気と現在時刻の外の明るさに合わせて変化しているそうです。気温と湿度は変わらないけど。

仕事は8時間勤務が基本だそうですが、こちらのディーラーさんたちの報酬は完全歩合制なので、ほとんど方が月曜日の朝から土曜日の朝まで、自分のブースを離れて過ごすことはないそうです。
ですから同じ照度のもとでは、精神的な変調を来すことがあるので、人間工学に基づいた調光になっている、とこちらに入ってから案内をしてくださる「統括マネージャー」さんが教えてくれました。

この巨大空間で働くディーラーさんは、ひとつのチームが9名編成でそれが6組。
全員で54人。そこに54人の秘書。
そのほかに清掃や荷物の配送を請け負う業務円滑化推進チームがあって、この空間には152人が24時間体制で働いているそうです・

一番左端のチームのディーラールームに案内されました。
そこはさらに異様な空間でした。
大きなブースに入るとなかは八角形になっていて、その中心の一段高いところでモニター画面に囲まれているのがチームマネージャーさん。
そして第一線で世界と対峙しているディーラーさんたちは、八角形の一辺がおよそ8mのガラス越しに見える個室で8人がトレードしていました。

赤色灯がぐるぐる回っているブースもあります。
トレーダーさんを中心に半月状に配置されている12ものモニターに写しだされているチャートは、必要に応じて常にトレーダーさんの近くに移動しています。
服装は…、いたってカジュアルというかパジャマ姿の人もいます。

元旦ディナーの時に、おじいちゃん投資家が「ディーラーたちは、まるで監獄に繋がれた囚人のようだ」と言っていたのは、このことか、と思わずにはいられませんでした。

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愛菜の質問Time

「ウィークデイは24時間いるのですか。」と案内人に伺うと
「トレードルームの奥に、シャワー室と仮眠室、トレーニングマシン。ビデオ鑑賞ルームがあります。そして週に一回の健康診断。食事は秘書が、ディーラーの趣向と健康を考えたメニューで作ったものを食べています。健康診断で要観察項目がひとつでも出ると解雇されますから、太陽光に浴びないことをのぞけば健康的です。」

「奥さんとかお子さんとかいないのですか。」
「ここに来ると、結果的には独身になりますね。」

「いったいこの人たちは、いくらぐらいの収入を得ているのですか。」
年収を日本円で言えば、50~100億円くらいでしょうか。でも彼らはお金を使うことには興味がないし、収入は個人の投資口座に振替えられるので、普通口座に移さない限りは非課税のままだから、納税者として国には貢献していません。」

「Sexはどうしているのですか。」
「秘書がいるでしょう。」
「…。」

「アルゴリズム取引はどうしているのですか。」
「現時点での収益率を見ると、裁量取引の方が断然いい結果を出しています。人工知能は、予測は出来ても勘は働きません。過去に起こった事象の累積頻度から現在のデータを判断します。
つまりトランプが大統領になる確率、それはマスコミの世論調査に依存した訳ですが、人工知能は、その世論調査自体が正しいものかどうかを判断出来ませんでした。
ですからトランプが大統領に当選したときの相場の下落は、人工知能による「想定外」「米国経済崩壊」の結論が原因でした。
でも今のアメリカは、トランプ大統領のお陰で隆盛を極めています。
人口知能は、まだまだです。

「政権の対中国政策には楽観していますか。」
アメリカの対中戦略は、肉を切らして骨を断つ。つまり中国を叩き潰すまでは、たとえアメリカ経済に血が流れるようなことがあっても断固として実行します。
アメリカの景気が悪くなったら、民主党のせいにすればいい。
我が金融界はトランプを忖度しています。英語でも「Son-Taku」といえばわかりますよ。」

午後3時の異変

フロアー全体が急に緊張感に包まれたのが、午後3時。
いつの間にか統括マネージャーさんの姿が見えなくなって代理の方が説明しているなと思っていたら、ここではじめて気がついたガラス張りの空中に浮いているようなブースに、全マネージャーを集めた鳩首会談の中心に彼がいました。

雰囲気を察した猪八戒先生が、おじいちゃん投資家の耳元で何やら囁きました。
すると、おじいちゃん投資家が、まるで黄門様のように「そろそろお暇しよう」と銀行の方に告げました。

私たちは来た方角とはまったく違う方角の扉から退出して、別の応接室に通されるときに、猪八戒先生が私に
「愛菜。おまえはマキとホテルに急いで帰って、トレードに入りなさい。」
「ドル円だけでいいから、きりのいい価格から<売り>だぞ。」と。

おじいちゃん投資家も、「そうしなさい」と人前でしばしお別れのKiss。
スマートでした。
久しぶりに得た、男の人の唇の感触でした。
おじいちゃん投資家の唇には私の真っ赤な口紅が移ったのですが、それを微笑みながら舌なめずり。
それがなんとも、かっこよく思えてしまいました。

急ぎホテルへ。トレード開始

手回しよく、車寄せにはリムジンが待機していました。
ホテルは西へ2ブロック先にあったので、10分もしないで部屋に到着。

マキちゃんが部屋につくなり
「今日はお疲れ様。愛菜のお陰で投資の神様もご満悦。愛菜には言いそびれていたけど、これからの私の仕事にとって、彼はなくてはならない存在なの。結果的にイヤな思いをさせてしまっていたらごめんね。」

「私なら大丈夫。こんなのは朝飯前。マキちゃんがこれからすることは全力で応援するから気にしないで。それにナニかあっても、あの人は糖尿だから心配いらないよ。」と、とりあえず返答。

私がパソコンの準備をして、快適に接続出来るサーバーを選んでいるときに、マキちゃんは私のトレードのために情報収集。

「兄弟子3番の情報によると、米国金融界がFRBに反旗を翻すという噂で欧州は持ちきりだって。」

今日市場が休みなのは、世界で日本とニュージーランドとスイスだけ。特に日本は休場明けのドル高期待でポジションをキープしたまま年末を終えた投資家が多かったみたいだから、日本を狙って何か仕掛けられる可能性もあるわ。」

「ニューヨーク連銀の前には、大勢の記者が集まっていると猪八戒先生からメール。それと投資の神様が、今日のお礼といって愛菜の口座に振り込みをしたらしいけど、先生はそれを全部投入しろ、と言っている。どうする?」

「どうする、と言われても私の口座のお金はマキちゃんが管理しているのだから、マキちゃん次第だよ。」と私。
「わかった。」とマキちゃんは自分のパソコンに向かいました。

今年の初動 他力本願で4円の利益

トレード開始。
ニューヨーク時間で2日午後4時45分。(日本時間3日午前6時45分)
といっても、109.00円に「売り」を入れただけ。

私はモニターに映し出された証拠金残高を見て、マキちゃんにいいました。
「それにしてもこんな大金。Kissの1回でよくくれるよね。囲われた気分。実際に使ってしまうのだから囲われたことになるのかなぁ。」
すると「別に気にすることはないでしょう。」
私はマキちゃんのこうゆうところが好き。

5分経過。午後4時50分。
「動く兆しがないんですけど。日本はもうすぐ3日の朝7時。アメリカ市場が終わって、もうすぐ1時間だよ。お腹すいた。」

10分経過。午後4時55分。
「このスカートね、座っていると上がってきてパンツが露出するから着替えていいかな。マキちゃんチャート見ててよ。」とドレッサールームに行きました。

そして長めのスカートに着替えて戻ったのが5時過ぎ。
「愛菜、終わったよ。決済しておいた。」と嬉しそうなマキちゃん。
「ごめん。ごめん。おじいちゃんのことを考えていたらボーっとしちゃった。」と私。
「4円取れたよ。」とマキちゃん。
「4円?40銭じゃなくて?」
「109.00円から105.00円までで4円。愛菜の昨年の納税分の2倍は取れた。」

チャートを見て私はびっくりしました。
短い時間で、2回もボーっとしました。

Appleが原因とも言われていますが、それがファンダメンタルズに影響したとしても、ジャスト5時。しかも1分そこそこの瞬間で、あれほど急落はあり得ません。

日本が仕掛けられたのかな。
年度はじめの輸出企業が想定していた為替レートは107円~108円。
危険水域に入った…。

今年最初のトレードが、猪八戒先生の「指示」とおじいちゃんから貰った「大金」、そしてマキちゃんの「絶妙な決済」という「3つの他力本願」で、私は昨年の稼ぎの3分の1の成績を、この一瞬で得ることが出来ました。

強運に拍車がかかってきました

私にとって周りにいてくれる人は、みんな神様です

今年は元旦のディナーから始まって、2日はゴージャスなランチとディーラールーム見学。そして他力本願で4円の利益と、今年も為替為替の日々になりそうです。

 

先ほどから投資の神様から何度も「観劇」のお誘い。
ホテルの総支配人からお願いされたりと、尋常ではありません。
でも今日はお断りしました。

昨日から8cmのピンヒールを履き続けていたので、とにかく足が痛い。
そう言ったのに、着ていく服がないと思われてしまって、またお洋服が届けられました。

そんな投資の神様との成り行きは、どうなるかわかりませんが、真剣にお誘いがあったら今回は避けないで、しっかりと受け止めるつもり。

そして条件はひとつ。マキちゃんと一緒ならいいよ、と言おうと思っています。

相手はお金持ちだから、どうせ飽きられていつかは捨てられる。特に私みたいなのは必ず。

だからせめてその間ぐらいは、一生懸命尽くして、少しでもマキちゃんの仕事がうまくいってほしいな、と思っています。

おそらく進展があるのは、英国のブレグジットの方向が定まる春先以降になるでしょう。

私の方向も決まったらブログに書きます。

明日はロンドンに向かいます。
投資の神様のプライベートジェット機に、猪八戒先生とマキちゃんと一緒に乗せていただくことになりました。
プライベートジェット機といってもボーイング777。旅客機。


本当のお金持ちって、すごいですね。

天野 愛菜