どうして買ったら下がるのか

背後霊の仕業なのか

愛菜
買いでエントリ-をしたら、その直後にどんどん価格が下がっていった、という経験は誰にでもあることだと思います。まるで背後霊がクリックした瞬間を見ていたかのように逆行。それに取り憑かれると、毎回逆に動いて損失のオンパレード。本当に自己嫌悪になる。
逆に動く理由は何ですか?

猪八戒先生
昔、僕がニューヨークでプロディーラーとして活躍しているリチャードに同じような質問をしたことがあるんだ。
そうしたら彼は、相場に対する投資家心理の遅行性が大きな要因だ、と言っていた。

愛菜
投資家心理の遅行性…。

猪八戒先生
つまり彼は、『買ったら下がる。売ったら上がる』という結果にいたった原因は、エントリーのタイミングが遅かったことにつきる。しかしそれはとっても人間らしいことなんだ、と付け加えた。
損失を重ねている時などは、また今度も失敗するかも知れないという恐怖心がある。
それは百戦錬磨のプロでも同じ。
そういう迷いやためらいの分だけ必然的にエントリーが遅くなるし、また安全で確実な利益を追求することでもエントリーが遅くなる。
そのことが結果的には、買い注文が決済されはじめた段階で買い注文を入れたことになる。

愛菜
価格が下がるということは、買い注文の決済・利益確定が進んでいるということですね。

相場の形成は恋愛の過程と同じだ

猪八戒先生
リチャードは、『買ったら下がる。売ったら上がる』現象を『相場の形成は恋愛の過程と同じだ』という観点から説いてくれた。
私たちは機械ではないから、常に感情に支配されて生きている。だから人間の心理を念頭にしたトレードを心掛けることで勝利の女神が微笑んでくれる。
つまり『買ったら下がる、売ったら上がる』という原因は、「傷つきたくない」という人間がごく普通に持っている心理が影響している、と。

愛菜
恋愛で「傷つきたくない」という心情を相場に置き換えると「損失を出したくない」と思うことね。

猪八戒先生
① 意識の段階
愛菜に気になる人が出来て、偶然にも一緒にいる時間が増えてきて、イヤな奴と思ったり優しいなと感じたり、相手を意識するようになる。

② 懐疑の段階
でもよく観察していると、別の子にも目配せしている。だからといって愛菜のことを無視するわけでもない。そういう中途半端な状況では心が悶々とする。

③ 楽観の段階
そうしていつもそばにいるようになって、この人といると楽しいな、と感じるようになる。

④ 幸福の段階
そうしてお互いの気持ちが実って幸福感に満たされる。そしてこの幸せは永遠に続くと思う。

それを相場が上昇している過程をボリンジャーバンドに置き換えるとこうなる。
① -2σ(シグマ)から-1σの間が、「そろそろ上昇するのかな」という意識の段階。
② -1σから±0σの間が、「でも±0で跳ね返って再度下降するかも知れない」という懐疑の段階
③ ±0σから+1σの間が、「わぁ上がってきた。いい感じ」、と楽観の段階
④ +1σから+2σの間が、「ああ本当に上昇した」、と幸福の段階
の4段階。

ボリンジャーバンドの収束率を考慮すると

ところが、その4段階をボリンジャーバンドの収束率で考えると
±1σの帯に収まる確率は68% 100回のうち68回が±1σで反転する。
±2σの帯に収まる確率は96% 100回のうち96回が±2σで反転する。
±3σの帯に収まる確率は99% 100回のうちほとんどが±3σで反転する。
つまり、ほとんどの場合が±2σで反転する。

幸福の中に絶望がある

リチャードは、人間のもっともな心理を考えれば幸福感が一番安心するからエントリーにもためらいを感じないが、しかし相場の世界では幸福感のある±2σ付近でエントリーをするから96%の確率で逆行する、と教えてくれた。
相場の格言に、幸福の中に絶望がある、とはこのことをいう。

そしてリチャードは、こういうんだ。
僕が相場で負けない理由は、恋愛でも少しでもこっちに気があるなと思ったら速攻でデートに誘う。そして相手を観察して気が合わなかったら別れちゃう。
つまりボリンジャーバンドでいうと楽観段階の±0σから±1σの間でエントリーして、トレンドにならなかったら、±2σで決済するんだ。

ボリンジャーバンドの±2σを越えていたらエントリーはしない

結論づければ、「買っては下がる、売っては上がる」理由は、ボリンジャーバンドの±2σを越えて幸福感に浸ってエントリーをしているからといえる。
だから96%の確率で失敗する。

そもそもエントリーをする場合はスプレッド分の損失から入る訳だから、相場というものは、損失から始まると割り切って、幸福段階ではなく楽観段階から利益を狩っていくという心構えが必要ということです。

 

愛菜の後日談

相場というものはどうして「買ったら下がる。売ったら上がる。」んですか、と猪八戒先生に伺ってからもう5年が経ちました。
ローソク足の頂上で、買いでエントリーして大きく損失を出して、積み上げてきた利益を瞬く間に失ったことも何度もありました。
猪八戒先生から今回の話を聞いてからはボリンジャーバンドの±0σを越えたらエントリーすると心がけました。実際のトレードではうまくいかないこともありますが、ひとつ決めたことは±2σを越えてからのエントリーだけはやらない、ということです。
当然±2σからトレンドに発展して、しばらくは呆然と相場を眺めていただけの時もありますが、結果として大きな損失を出すことがなくなりました。

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